わが国は、現在男女ともに世界屈指の長寿国であり、高齢人口の増加とともに美容外科手術の中でも特に若返り(rejuvenation)として除皺術への要望が高まっています。
精神的、肉体的にいつも若くありたいと願う高齢者にとって、顔の皺、たるみは当然気になるものです。
東洋人は皮膚・皮下組織が厚くて重く、また骨格的にも頬骨、エラが張り出していることも多いため、フェイスリフト効果が出にくいことが多いのです。この“患者さまの理想像”と“手術効果の限界”とのギャップを埋めるための有効な手術法について、SMAS、retaining ligamentの解剖学的特長を中心に説明してまいります。
フェイスリフト手術において重要な鍵となる解剖は、(1) SMASの詳細な解剖、(2)retaining ligamentです。
フェイスリフト手術の目的は、加齢により下垂した皮膚、皮下軟部組織をrepositioningすることです。
SMASは、帽状腱膜(galea)-前頭筋(M.frontalis)-浅側頭筋膜(superficial temporal fascia;STF)-SMAS-広頚筋(platysma)と連続した表在性筋膜の一部を構成しています。ここで重要なことはSMASは頬部中央で大頬骨筋(M.zygomaticus major)と強く結合しており、この部位で浅層・深層に分かれて大頬骨筋を取り囲んでいます。
すなわち、SMASを単に外側方向に引っ張ることは、大頬骨筋を外側に引っ張ることになり、結果的に鼻唇溝を深めることになります。

retaining ligament
顔面のretaining ligamentは重量に拮抗して軟部組織を支えている支持組織であり、SMASとともにフェイスリフト手術を行なう上で重要な解剖学的ポイントとなります。
retaining ligamentは非常に硬く頑丈で、顔面の皮膚(真皮)と骨格、深筋膜層とを連結しています。臨床的には、老化によりzygomatic ligamentが緩むと頬脂肪全体(malar fat pad)の内側下方への下垂が起こって、結果として鼻唇溝が深く目立つようになります。
一方、masseteric ligamentが緩むと頬部全体の脂肪は下顎縁周辺まで下垂し、いわゆる“jowl変形”が起こります。
